I 進化の医学 × 心身の医学


初心忘るべからず 生きる道に迷ったら初心にもどるのが最善の道。北極星が船乗りの針路となり、自分の原点が未来の針路になります。現代人が100年人生を円満に生ききる秘訣は人間の原点を知ること。地球に生命がうまれて以来のすべての進化を人類は経てきました。生まれたての人間はゼロではなく、38億年あるいは600万年かけて進化してきた力を宿しています。その能力資産はまさに無限大∞。無窮の生体能力をどれほど発揮できたかで人生の質が評価されます。人間は進化のすえに120歳まで寿命を伸ばしたかわりに、50歳を期に心身が劇変するようになりました。人生最大の激変をのりきれない人は亡くなります。戦国の武将・信長も桶狭間の戰さの出陣に「人生五十年」と舞い謡いました。100年生きる現代人の50歳は、青年期をおえて更年期へはいる「子ども」から「大人」へと成長すべき人生境涯です。仕事して、結婚して、育児と介護をこなす生活スキルを学びおわれば自分自身の存在意義を賭けて人生の目標を実現するのみです。たった一度の人生を50歳からどう生きる。その指針となるのが「進化医学×心身医学」のメッセージです。「いのち」の無尽蔵の能力を活かせば100年におよぶ人生の豊饒な収穫を受けとることになるでしょう。



I はじまりの進化医学


進化医学は現代医学の弊を解決すべく産声をあげた最新の医学です。AIやコンピュータの進歩で遺伝子研究などはよく発展していますが、診断技術は発達する一方で、治療技術が著しく停滞しています。医学はとても進歩しているのに、深刻な病気にかかる人々や、味気なく無意味な人生に苦しむ人々が年々増加しているのです。病気であると診断できても、どう治療すれば完治できるのかわからない、というのが現代医学の最大の難点です。たった100年前にはみられなかった高血圧・糖尿病・肥満・アレルギー・うつ病・がんのために人が苦しんだり亡くなるのは、いったいなぜなのか。図表にあるように厚生労働省の「2016年国民健康・栄養調査」では糖尿病患者が1000万人、糖尿病予備群がやはり1000万人と推計されました。1997年には糖尿病患者は690万人でしたので急増しています。2型糖尿病は100%予防できる病気のはずですが、根絶どころか増えつづける理由は何か。その答えに肉迫するのが進化医学です。進化医学者は、進化してそなえた人間の生体能力と現代生活環境が不適合(ミスマッチ)を起こしている、と考えています。糖尿病やがんの治療ではなく、そもそも糖尿病やがんにならないために、遺伝子スイッチのオンとオフを自分で操作すればよいと考えるのです。自分で遺伝子のオンオフをおこなう方法や技術については希望的な見通しがあります。しかも、それだけではありません。人生の豊かな価値に気づかず、暇つぶしにいそしむのも現代人固有の病弊です。親と子のコミュニケーションがない、いじめが頻発する、子離れできない、結婚せず独身でいる、結婚するとすぐ離婚する、セックスが苦痛だ、将来が不安だ、死のことを考えると怖くて仕方がない、そのすべてが現代人に蔓延して深刻化している医学的な問題です。これらの問題を解決するまったく別のアプローチがあることを進化医学者は確信しているのです。



I はじまりの心身医学


遊方之外は心身医学を実践する心療内科医です。「心と身体はひとつである」という医学的信念のもとに、内科疾患を心からたてなおし、精神疾患を身体から再建する、という治療アプローチで、これまで治療が成功しなかった方々の恢復に貢献してきました。医師をめざしていないころから、上海にわたって漢方と気功をまなび、安泰寺で坐禅にとりくみ、ヒマラヤの洞窟ではチベットの密教瞑想をマスターしました。その独自の医療センスを活かして、いまは「治療困難な患者」専門の医療活動を手がけています。私自身が「知天命」ともいう50歳を契機に心身がすっかりいれかわる体験をしたことから、食事のみならず、睡眠・排泄・呼吸・姿勢・自律神経・セックスの問題と解決に目がひらかれ、思春期の若者と、更年期以降の高齢者の医療アプローチを厳密に区別してから治療成績が格段に向上しました。それは「心身一如」であり、人間の心身は50歳を契機に大劇変をおこすという生物学的真実を尊重することで可能になりました。じっさい、「大人」の人は安楽な死を容易に実現しています。私は、よく生きてよく死ぬことを医療の最大目標に掲げて「心身医学」に邁進しているのです。

 



I 「いのちの学校」の「いのち」


  "いのち" 奇跡の進化

人間に最もちかいチンパンジーの寿命は約50年。出産期をおえると死ぬのが生物世界の厳しい掟。人間の寿命がゆうに100歳をこえるのは600万年かけて”いのち”を進化させてきた証。人間の人間たる所以は、50歳からの人生にこそあらわれる。ゆえに孔子は”五十で天命を知る”という。若者の生活は”知命”をむかえる準備期間というが道理。

医師 ゆふ しこを

心療内科医の遊方之外(ゆふ しこを)は知命のわずか数ヶ月にして心身がすっかり入れかわり、人生でもっとも理想にちかづいた境地(心身)を委ねられた。しなやかにはねる幼な子の身体と、本来の自己そのものの無底に安住する精神をあずかり、湘南の地で在宅訪問診療に渾身とりくみ、 ”いのち”がおりなす遊びに今日も学びほうける。

 老化と進化の分水嶺

生殖出産期をおえると女性は更年期をむかえる。女性も男性も、心身が劇的にいれかわる50歳から ”いのち”をおびやかす致命的な病気が急増する。100年人生を折りかえす50の齢に、若さを気どり昏きに病み苦に老ゆるか、長叡の命光に照らされて天真の功自ずと進むか、生き方の選択が人生を極上にも地獄にもみちびく究極の分水嶺となる。